2023/06/05
かつて『一億総中流』という言葉が流行りました。
これは、内閣府の「国民生活に関する世論調査」の結果、大多数の国民が自身の生活水準を「中の下~中の上」と答えたことを、当時の日本の人口約1億人にかけた言葉です。「まあまあ、自分は中くらいのレベル」、すなわち“ふつう”と考えていたのでしょう。
この意識は、とっても大切で、心地いいものだと思います。
「下」は嫌ですよね。辛すぎます。かといって、なかなか「上」にはなれないし、「上」になれば、周囲からの嫉妬もあるし、その位置を失う恐怖感もあるでしょう。そうなると、“ふつう”が居心地いい、ということになります。頑張れば、「中の上」くらいにはいけるかもしれないと思って、努力を続ける気にもなるでしょう。
そこで気になるのは、自身の才能です。野球の大谷選手や将棋の藤井7冠のような、超一流になれる才能はありません。すべてを投げ打ってその道に没頭できるほどの一途な生き方はできないのです。周囲は誘惑でいっぱいです。そんな中で、ソコソコ頑張って生きているのが“凡人”だと思います。そして、それら多くの凡人達が命をつないだ結果が、現代の私達ということになります。
後世に名を残すような天才は一握りでいいです。その人達の人生には、想像を絶するような苦労もあるでしょう。その点、凡人は気楽でいいですよね。少し上に行けば「努力の賜物です」と誇れるし、少し落ちても「才能がなかった」と言い訳もできます。
今は死後になりつつある「一億総中流」、とってもいい響きです。
多くの“凡人”が“ふつう”に過ごせるような日々が永く続くことを願っています。